最近、魚の陸上養殖が気になってます。
![最近、魚の陸上養殖が気になってます。](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/AdobeStock_320439956.jpeg)
昔から魚の養殖は盛んに行われていますが、近年畑などの陸上を利用した養殖が盛んに行われるようになってきているようで、すごく気になっています。
というのも、小さいころに海や川に釣りに行ったり、水槽で熱帯魚を育てたりと、なにかと魚に興味があったというのもありますが、社会課題となっている耕作放棄地や食糧不足の課題を解決できる可能性を秘めているところにも魅力を感じるわけです。
陸上養殖って何?
陸上養殖はその名の通り、陸上で養殖を行うこと。陸上養殖は畑や海・川の近くの陸地に養殖場を作って、そこで海水魚や淡水魚の養殖を行う方法です。陸地で育てることから「農漁」と呼ばれることもあります。
![サーモンの陸上養殖の様子](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/recruit-middle2-1.jpg)
これまでは海面養殖が主流でしたが、養殖に適した場所が限られていたり、季節要因による影響が大きいこと、さらに餌や魚の汚物による環境汚染の問題から、陸上養殖への関心が高まっています。
陸上で海の魚を育てられるなんて感動でしかない。
簡単に陸上養殖のシステムについて解説
陸上養殖の方法は、大きく分けると「閉鎖循環式」と「掛け流し式」に分類されます。
陸上養殖システム①閉鎖循環式
![閉鎖循環式陸上養殖システムの全体像](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/閉鎖循環式.png)
閉鎖循環式は飼育槽で利用した水を浄化して、再度飼育層に入れる水族館と同様のシステム。水を浄化するための循環システムは必要ですが、利用した水を循環させて再利用しているので、環境への負荷が少ないのが特徴です。
陸上養殖システム②掛け流し式
![かけ流し式陸上養殖システムの全体像](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/251010si1-pdf.png)
掛け流し式は海や川から水を汲み上げて、魚の水槽へ入れる方法。
閉鎖循環式ほどの浄化システムは不要なものの、利用した水は海や川へ排水するため、環境への負荷は閉鎖循環式よりは大きくなります。
どちらも陸上養殖ですが、仕組みは大きく異なっています。
スマート養殖として世界的に注目されている
近年の陸上養殖は、AIなどの最先端技術を積極的に取り入れながら、ハイテク化を目指すいわゆる「スマート養殖」として世界的にも注目されつつあります。
最先端技術を取り入れることで、飼育環境の安定・餌や清掃の自動化など、これまで人の手によって行われていた作業のスマート化が進んでいます。
一般的なサービスと同様に、PDCAを繰り返して、魚がより育ちやすい環境を構築していくわけですね。
![スマート養殖の全体像](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/img_farming03-1024x386.png)
世界的な食糧不足、耕作放棄地の利活用、海洋養殖による環境への影響など、様々な課題を解決できる取り組みとして、日本でも多くの企業が参入しています。まさにSDG’sにマッチした取り組みといえますね。
こちらのリージョナルフィッシュ株式会社は、魚のゲノム編集技術を活用して品種改良を行い、Iotを駆使したスマート養殖を目指す企業として高く評価され、20.4億円の資金調達を行いました。水産業とは接点のないような業種からの投資も盛んに行われているようです。
![リージョナルフィッシュ株式会社の資金調達](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/リージョナルフィッシュ、シリーズBで約20-4億円の資金調達を実施|リージョナルフィッシュのプレスリリース.png)
![リージョナルフィッシュ株式会社へ投資した企業](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/リージョナルフィッシュ、シリーズBで約20-4億円の資金調達|リージョナルフィッシュのプレスリリース.png)
陸上養殖のいいところ
陸上養殖のメリットについては少し触れましたが、他にもたくさんのいいところがあります。
漁獲量の減少を補うことが出来る
![サケ漁](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/1000_F_321750738_TRVnpfbxStd08QezJvwD6fa1T5LK1BqK.jpg)
地球温暖化や海洋汚染の影響で、一部の地域や魚の種類によっては、漁獲量が少なくなっています。水産業に取っても大きな痛手ですが、私たちの生活においても魚の値段があがったり、将来食べられない魚がでてくることも。
陸上養殖を行うことで、減少した魚の需要を補填したり、海で取れにくくなった魚を提供することも可能になります。
陸から直送できるから鮮度抜群!
![鮮度の高い刺身](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/AdobeStock_320078015-1024x682.jpeg)
海の魚が食卓に運ばれるまでには、多くの工程が必要なこともあり、鮮度を保つのが大変という側面がありましたが、陸上養殖で陸から直送できるので、鮮度を保ちやすいというメリットもあります。
海の養殖より安全性の高い魚を育てられる
![魚料理](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/AdobeStock_371444135-1024x682.jpeg)
海で育てることでアニサキスといった細菌などに感染するリスクも高くなったり、そういった細菌をなくすために薬剤を使用することもあるため、食の安全性を保つことが難しい側面もあります。陸上養殖では人工の海水を使用して、細菌感染や病気になりにくいシステムを構築することで、より安心して食べられる魚を育てることができます。
海や川への影響が少ないから環境にも優しい
![砂浜と亀](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/AdobeStock_300275335-1024x621.jpeg)
海水で育つ魚は海での養殖が一般的ですが、特定の場所で大量に育てる必要があるため、餌や糞による海への影響は避けられません。
陸上養殖でも同じように大量の餌を与えたり糞も出ますが、濾過システムで水を浄化したり、アクアポニックス(魚の糞などに含まれる栄養素を活用して植物を育てるシステム)へ活用するなど、環境への負荷が少なくなるようなシステム設計が行われています。
食糧危機の解決に繋げられる可能性
![食糧不足](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/1000_F_450416486_3YAJKdWga5ENtfwBYrdMMuY4D9uFc3QY.jpg)
地球環境の変化や人災によって、世界的な食糧危機が懸念されている時代において、場所を問わず、しかも水を再利用して育てられる陸上養殖の恩恵は計り知れないものになると、個人的にも感じています。
コスト面や技術面での課題はあるようですが、今後陸上養殖が進化していけば、アフリカや砂漠地帯のような水不足に悩む地域でも魚を食べられるようになる日がくることでしょう。
陸上養殖で育っている魚たち
陸上養殖のスマート化が進むにつれて、より多くの種類の魚が育てられるようになってきています。
埼玉の陸上で「鯖(サバ)」育ってます
海なし県と言われ続けて数十年。
そんな海のない県でも、鯖(サバ)が育ってます!
株式会社温泉道場さんが経営する「おふろcafé 白寿の湯」では、「温泉サバ陸上養殖場」の名称でサバの陸上養殖を始めています。
![サバの陸上養殖の様子](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/2110_saba_open-4-1-1024x683.jpg)
養殖で育てたサバは、隣接する温泉施設内の食事処で料理されたり、施設内で釣り体験を楽しめたりと様々な形で活用されているようです。
※養殖場のトラブルの為、2023年以降に提供開始する予定
![陸上養殖で育てたサバ料理](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/2107_hakujyu-1024x684.jpg)
海なし県でサバが育つなんて夢がありますなー。
千葉の陸上で「サーモン」育ってます
サーモンといえば、ロシア産という印象が強い魚ですが、千葉県の陸上でもサーモンが育ってます!
株式会社 FRDジャパンさんでは「おかそだちサーモン」の名称でサーモンの陸上養殖を行っています。
![サーモンの陸上養殖の様子](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/top-bg3-1024x454.jpg)
おかそだちサーモンは千葉県木更津市のふるさと納税の返礼品や紀伊国屋のスーパーなどで販売されたり、レストランの食材としても使用されています。
輸入が大半を占めるサーモンを養殖できるようになれば、日本の水産業にとっても大きな変化に繋がりそうですね。
![陸上養殖で育てたサーモン](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/okasodachi-1.jpg)
栃木県の陸上で「トラフグ」育ってます
刺身・鍋で食べると激ウマ!巷では高級魚で知られるトラフグが陸上で育ってます!
栃木県那珂川町にある株式会社夢創造さんは、地元の活性化のきっかけになればと元スイミングスクールのプールを利用してトラフグの陸上養殖を始めました。
![トラフグの陸上養殖の様子](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/cultivation_img001.jpg)
ここの陸上養殖の特徴は温泉水を利用していること。塩分が含まれる地元の温泉水を調査したところ、海の魚を育てられることがわかったそうです。
「温泉トラフグ」の名称で、地元のお店や通販などでの販売を行っています。
![陸上養殖で育てたトラフグ料理](https://bloom-t.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/satonoka_img008.jpg)
その他にもたくさんの魚たちが陸上養殖で育てられています
先ほど紹介した魚以外にも、タイ・ヒラメ・チョウザメ・エビ・アワビなど、たくさんの魚種が陸上養殖で育てられています。
技術が培われるにつれて、より多くの魚が育てられるようになりそうですね。
陸上養殖は現代に必要なソリューション
陸上養殖のことが気になって色々と調べてみましたが、環境問題・食の問題・雇用の問題・地方過疎化の問題など、一つのビジネスで様々な課題を解決できるビジネスモデルだなーと改めて実感しました。
陸上養殖にはまだまだ課題はありそうですが、様々な社会課題を解決しながら人々の食卓を豊かにできる、そんな可能性が詰まったソリューションでした。
将来はアフリカなどの食糧不足の地域でも活用されるといいですね。