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自己表現と多様性 ~ Z世代ってどんな世代?SNSはどう使う?

自己表現と多様性 ~ Z世代ってどんな世代?SNSはどう使う?

 「Z世代」、という言葉がメディアを賑わせるようになって久しくなりました。その感覚や流行など、時に事実、また時には「え?」と言わざるを得ない偏見のような情報などなど…Z世代に関しては様々な話題が飛び交っています。

 その中でも気になるのがSNS。「デジタルネイティブ」ともいわれている彼/彼女らのSNSとの付き合い方はこれまでの世代とは一線を画している、ことを小耳にはさんだ方は多いと思われます。

 そこで、今回はZ世代流のSNSの付き合い方とその感覚に関しての考察をしていきましょう。

Z世代の価値観と次世代SNSの関係

 まず、Z世代の価値観と次世代SNSの関係について見てみましょう。米国のコンサルティング企業であるマッキンゼー・アンド・カンパニーによると、Z世代とは、1996-2012年に生まれた若い世代を指します。 今年時点で10代から20代に相当する若者がZ世代です。

 特徴としては、デジタルネイティブと呼ばれ、物心ついた時には既にガラケーが普及、PCはある程度世代の進んだWindowsXPなどのOSが既に存在しており、「デジタル/IT技術とともに育った」というよりも「デジタル/IT技術はあって当たり前」という環境で育った世代です。

 必要に応じてオンライン/オフラインを使い分ける上の世代(ミレニアル/団塊ジュニア/バブル…)とは基本的な考え方が違う傾向があるため、その前提を理解するよう心がけると話がスムーズに進むでしょう。

 すなわち、彼/彼女らにとってSNSは水道や電気のように「インフラの一部」というのが感覚として近いのかもしれません。

自己表現と多様性が鍵:Z世代に人気のSNS特徴

 Z世代は自己表現や多様性が鍵、と言われています。このようなスタンスが主流となったのは

  • 好景気を経験していないため、大多数が画一方向に動くような流行の経験が乏しい
  • 東日本大震災、新型コロナ禍、毎年のように起こる「未曾有の大災害」を立て続けに経験
  • 「いつ不自由になるか解らないのだから自分が納得のいくことをしよう」という想いが強い

 これは支持されている芸能人やファッションからも顕著であり、少し前まではいわゆる「原宿系」などでしか見かけなかったような赤や緑色の原色のヘアカラーなどもこの世代では一般的です。

 街に出ても今までは見かけなかった髪色の若い方は増えましたし、社則で髪色や服装自由で平均年齢が若い企業では、同僚や部下に金髪はもとより、緑色や紫色といった髪色をオシャレに楽しんでいる人も多いでしょう。

 このように、既成事実に囚われない行動原理を持つ一方で、デジタルネイティブかつ都会育ちでは対面でコミュニケーションをとる機会が少なかったともいわれています。

 そのため、ミレニアル世代以上がこぞって「いいね」をかき集めるために「映え」を狙った投稿をするのとは対照的に、趣味別にアカウントを使い分けるなど価値観の合う少人数でのコミュニティでSNSを用いていることが一般的です。

Z世代が求める新たなコミュニケーションスタイルとSNS

 では、Z世代がSNSに求める新たなコミュニケーションスタイルとはいったいどのようなものでしょうか。これを紐解く鍵として、「心理的安全性」が一つのヒントになるかもしれません。

 現代日本では職場環境構築の指針としてお馴染みになってきたこの表現ですが、その浸透し始めた時期がZ世代が大学を卒業し、社会に出てきた時期とほぼ重なる(2010年代後半頃)のも注目に値します。実際にZ世代と心理的安全性で事例を探すと、下記のような事例が見つかりました。

荒井:僕が組織の運営で意識しているのは、(中略)最近の言葉で言うと『心理的安全性』の確保です。要は、言いたいことを言っても大丈夫だという環境を醸成することです。年齢がみんな近いので、それは形成されやすいですが、それでもみんなが緊張したり、言っていいかどうか迷ったりすることはあると思います。
意見が言えない状況が続くと、社員の精神的なストレスの要因にもなりますし、会社にとっては新しいアイデアが産み出されづらい環境、つまり成長機会の損失にも繋がります。なので、本音を言うことの重要性を、(中略)ちゃんと本音を言い合える風土を作り、心理的安全性を確保するように努めています。

「Z世代が集まるACROVE「心理的安全性」のワケーーカムスタ!チームワークのお話」

 「心理的安全性」で「何を言っても大丈夫な環境」を担保する、となるとZ世代が重要視する「自己表現と多様性」を環境面から構築しているともいえるかと思われます。

 引用元の記事でインタビューに応じている株式会社ACROVEのCEO・荒井俊亮氏も2022年の取材当時26歳、1996年生まれのZ世代としては上の世代にあたります。もちろん一つの会社の事例だけですべてを図るのは早計かもしれませんが、職場と心理的安全性の例としても突飛な例ではなく、納得感のある話と思われます。

 Z世代界隈でウェブ/リアルを問わず同じ方向性のムーブメントが起きていることは特筆に値することと思われます。

デジタルネイティブ世代が選ぶSNS:なぜ今これが人気?

 ここでは心理的安全性に関しては一旦筆を置き、デジタルネイティブ世代が選ぶSNSに関してその人気の理由を探ってみます。

 結論から言うと「エフェメラル=残らない」もしくは「リアル=本物をありのまま」の要素があるSNSが共通してみられるところに答えがありそうです。

 例えば、Instagramはミレニアル世代以上にも人気のあるSNSですが、Z世代が主に重宝しているのは加工しまくりの映え狙い写真やいいね数稼ぎではなく、24時間で消滅するリール動画やメッセージ機能だったりします。また、「消滅する」要素を持つSNSで他に思い出されるのはSnapchatのスナップやストーリーも時間限定のエフェメラルコンテンツです。Snapchatは主要コンテンツの2つがともにエフェメラル要素を含んでいながらZ世代に支持されていることを考えると、やはりこの要素がマッチしていると考える方が自然でしょう。

 同じInstagramでも使われ方が世代間で全く違うのは非常に興味深いですが、その分ミレニアル世代以上の「見栄」重視の使い方は「Facebookおじさん」と揶揄されるようなFacebook上で社会的ステータスをひけらかすような使い方とも相通じ、そのような場所をSNSに求める世界観と取れますが、Z世代はその「虚飾」に関わるところは使わず、むしろ「虚飾」を見抜くために使うこともあるのは「デジタルネイティブ」ならではともいえるのではないでしょうか。

 そして、デジタルネイティブとInstagramの付き合い方で象徴的なものは、カフェなどの「映えるメニュー」もインスタ上の店舗公式アカウントと実物を比較し、写真上で盛り過ぎていないかどうかを検算するということも広く行われているようです。

 

次世代SNS:Z世代のライフスタイルにどうフィットするか

 つづいて、現在Z世代に支持されているSNSを、同じくZ世代に支持されている心理的安全性の考え方やライフスタイルに照らし合わせることで見ていきましょう。

 Z世代が「デジタルネイティブ」であることは本記事でも複数回でてきていますが、これは裏を返せばSNSの闇の面も多感な時期にリアルタイムで体感しているからこそ、現在のような他世代とは違うSNSの使い方をする世代になったともいえるのではないでしょうか。

 この世代が多感な時期にSNSの闇の面を見たとするならば、「炎上騒ぎ」辺りではないかと推測されます。炎上騒ぎが世間一般に出てきたのが2010年代であり、Z世代が中高生だったころにオーバーラップします。

 この時期は「バイトテロ」や「バカッター」と揶揄されるような非道徳的な行為がSNS上で横行した時期であり、これらの炎上騒ぎからデジタルタトゥーを負ってしまった事例を見聞きしたことから「ずっと情報が残るSNSはリスクが高い」という意識に至ることは自然であると思われます。

 しかし、SNSそのものをしないというのもまた仲間から外されてしまうリスクのある行為であることから、両者の折衷として「すぐ消えて残らないSNSなら比較的安心」という結論に至ることもまた自然ではなかろうかと思われます。

 そういった背景で育ってきた世代が、SNSに「エフェメラル=残らない」を求めることは非常に理にかなっているといえ、ある意味では必然な流れであるともいえます。

Z世代の来し方行く末

 ここまでで、Z世代がどのような背景を持ち、現在に至るまでどのような背景を有しているかを考察してきました。

 ひきつづき、Z世代がSNS界隈のみならず現代日本でどのような世相に影響を受けながら育ってきたのかなどを考察していきたいと思っています。