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【後編】人工知能を構築するための重要なポイントは5W1Hを考えること

【後編】人工知能を構築するための重要なポイントは5W1Hを考えること

株式会社ブルームテクノロジー マーケティングリサーチのスタッフです。

近年の人工知能の技術発展は目まぐるしく、様々なサービスやIoTなどに人工知能が使われてきています。AIエンジニアの需要も急速に高まり、エンジニアを目指す学生が増えているのだとか。また、人工知能が日常生活で身近になってきたことで、人工知能を事業に取り入れようと考えている会社も少なくありません。もしかしたら、あなたも突然「人工知能の開発担当」を任されるなんてことも現実に起こりそうですよね。

ここでは人工知能を企業が利用を進める前に、初めに取り掛かる「人工知能構築の考え方や人工知能に何をさせるのかを5W1H」をステップごとに前編・後編で紹介をしております。

前編では「誰のための人工知能なのか?(WHO)」と「なぜ人工知能を作る必要があるのか(WHY)」について執筆させて頂きました。

後編は「どのタイプの人工知能を適用するのか(WHICH)」、「どうやって人工知能と分業するのか(HOW)」、「人工知能で何ができる(WHAT)」、「いつまでに何を用意していくのか(WHEN)」について一挙に説明させていただければと思います。

前回までの記事もあわせて読んでいただけますと嬉しいです。

※当記事は2021年、当社が人工知能開発を始める前に行った調査内容に基づき書いています。

目次

【WHICH】人工知能はどのタイプ、何ができるの?

役割別(代行・拡張)と機能別(予測・識別・会話・実行)AI活用例
人工知能を役割で分類すると「代行型」と「拡張型」の2タイプに分けることができます。さらに機能で分類すれば「予測系人工知能」「識別系人工知能」「会話系人工知能」「実行系人工知能」の4タイプに分けることができ、役割×機能を組み合わせることで8タイプの人工知能になります。

最近、日常生活の様々なシーンで人工知能(AI)を目にします。人工知能と聞くと「何でもできる」「人よりも優れた万能選手」という漠然としたイメージで捉えている方も多いのではないでしょうか。

確かに人よりも優れた能力を発揮するものもありますが、かといって人工知能が何でもできるというわけではありません。

様々なシチュエーションに対応する人工知能を構築するというのは非常に難しいため、構築する際は「役割」と「機能」で考えるのが一般的です。

それでは、それぞれの特徴や活用例などを見ていきましょう。

【役割別】人工知能は代行型と拡張型の2タイプに分けられる

【役割別】人工知能は代行型と拡張型の2タイプに分けられる

人が行っていたことを人工知能が行う「代行型」

代行型人工知能の特徴は、これまで人が行っていた作業を代行することです。代表例として検知・監視・モニタリングなどがあげられます。サーバーの監視などの24時間365日行うものや防犯や人物探知など一定のロジックに従って通知を行うものなど、他のシステムと連携し様々な用途で使用されています。

テクノロジーで人の身体能力や知覚能力を向上させる「拡張型」

拡張型人工知能の特徴は、人の身体や知覚、存在を拡張します。身体拡張の代表例としてはパワーアシストスーツで身体機能を強化することができます。また知覚拡張の分野では医療現場における画像診断などが該当します。さらに存在拡張分野では遠隔でロボットを操作を可能にするなど、IoTを活用したケースが多いです。

【機能別】人工知能は予測・識別・会話・実行の4タイプに分けられる

【機能別】人工知能は予測・識別・会話・実行の4タイプに分けられる

蓄積された過去のデータを学習し将来を考え予測する「予測系人工知能」

予測系人工知能の特徴は、ビッグデータを活用し高精度な将来予測を行ったり、過去の情報の特徴から異常検知を行うものがあります。例えば与信判定を行う人工知能活用の例だと膨大なデータを読み取り、人が気づかなかった隠れた特徴を学習し、予測やカテゴリーに分類することが可能です。これら予測系人工知能を用いて需要予測やビジネス上の意思決定のサポートに役立てることができます。

視覚や聴覚情報を用いて認識や判断を行う「識別系人工知能」

識別系人工知能の身近な代表例は顔認証音声認識です。スマートフォンで実用化されているのでお馴染みだと思います。それ以外にも、自動運転技術のように認識と判断など複数の作業をリアルタイムで行う必要のあるものにも人工知能が組み込まれています。

人工知能を利用することで、走行しながら画像認識を行い、その情報をもとに危険を察知したらブレーキをかけるなど、マルチタスクをこなすことも可能になりました。

人と対話(話す)するように言語表現が可能な「会話系人工知能」

会話系人工知能は、人の質問に対してテキスト情報で対話してくれるチャットボットのようなシステムが代表例と言えるでしょう。自然言語処理をつかった人工知能技術により、質問の意図を高い精度で読み取ることが可能なため、コールセンター業務などで活躍しています。またテキスト以外にも音声会話の口述表現を高度に理解したうえで会話を返すものもありますが、複雑な質問や臨機応変に対応するのは苦手のため、柔軟できめ細やかな対応は人の手が必要となっています。

体や物体などを制御や操作が可能な「実行系人工知能」

実行系人工知能は知的振る舞いから判断し行動する特徴を持っています。人が行う作業を代行する自動運転やお掃除ロボなどが代表例です。最近では人の手による動機付けを行うと新聞記事を制作したり画像の生成、作曲をするものもあります。クリエイティブ分野では様々な形で生成系人工知能が台頭してきており、特に画像分野において大きな成果をあげています。

【HOW】どうやって人工知能と分業するのか?不得意なものを考えよう

【HOW】どうやって人工知能と分業するのか?不得意なものを考えよう

次に、人工知能と人の分業をどう考えるのかですが、人工知能を使いこなすためには、人の役割と人工知能の役割を考えていく必要があります。人工知能を労働の担い手として考えた場合には、これまで人が行ってきたタスクや業務の一部を代替することで業務を効率化し、生産性の向上が見込めます。また、これまで人が携わってきていなかったタスクや業務を担う場合だと、新しい仕事や新規事業が生まれる可能性も見えてくるかもしれません。今までにないシナジーを生み出すためにもお互いの異なる得意分野、不得意分野を認識し、対等なパートナーとして連携と補完し合える関係を模索していくことが重要です。

人が得意なこと苦手なこと、人工知能が得意なこと

人が人工知能よりも得意といえるのは創意工夫や共感、コミュニケーションができることです。一方、人工知能は大量のプロセスの処理を行ったり、反復作業を正確かつスピードをもって処理することが得意といえます。

人工知能は万能選手ではなく苦手分野がある

人工知能の苦手なことの一つに「パーソナライズ化」が挙げられます。パーソナライズ化とは、特定のターゲットにあわせて対応を変えることです。人工知能でパーソナライズ化するためには過去のデータが必要なため、事例のない新しいものや少ないものに関しては、正確な対応が苦手とされています。

相手の気持ちを理解するというのも苦手

コミュニケーションが必要な場面においては、相手がどのような考えをもっているのかを予測し、人の気持ちを組んだコミュニケーションが必要ですが人工知能は感情を持たないため、人の心理までは読めません。言語を理解する場合でも前後の文脈(コンテキスト)から読み取らないといけないため、いわゆる空気を読むというのは苦手です。

人工知能に何をさせるのか

以上のことから人の仕事を完全に代行できるものなのか、人の仕事を補助するものなのか、人の仕事を拡張するものなのかなどを考え、人と人工知能の得意分野と不得意分野をすみ分けをしながら決めていくとよいでしょう。

【WHAT】人工知能で何ができるの?解消されるものを考える

【WHAT】人工知能で何ができるの?解消されるものを考える

人工知能活用の本質は「人工知能が人の不得意な作業を効率化」する、「(作業時間などの)作業を削減」するツールだということです。その視点で人工知能で何ができるのか、それによってどのような解消がもたらされるのかを考えて、人と人工知能を連携させていきます。

お互いに異なる強みとスキルを融合(それぞれの不得意分野をカバーし、強みを発揮)すれば、人が単独で行うよりも大きな価値を生み出すことができます。つまり、いままでにはなかったシナジーを生み出すことができます。

【WHEN】人工知能開発でいつ何を用意する?3つのサイクルで考える

人工知能開発は「データ要件」、「人工知能要件」、「アプリ要件」の3つのサイクルに分類することができます。人工知能を企業で利用していくためにこれらの構築と開発が必要となりますが、「人工知能開発者がいない」、「どこから手を付けたらいいのか、何からやればいいのかが分からない」など企業によっても状況が様々だと思います。その場合は構築済みのサービスを使うことができるのかを検討するのも一つの手です。または費用対効果から自社開発をするのではなく構築済みのサービスを選定するというのもありなのではないでしょうか。

サイクル①人工知能開発におけるデータ要件

分析の対象となる多種多様なデータをリアルタイムかつ、継続的に蓄積していくサイクルのことです。

サイクル②人工知能開発における人工知能要件

蓄積されたデータをパターン分析に適した形に加工し、課題解決の相関を分析、学習モデルをつくって推論エンジンを生成するサイクルのことです。

サイクル③人工知能開発におけるアプリ要件

推論エンジンと疎結合するアプリケーションを実行モジュール化し、モニタリングによる効果測定、アプリの改善や変化するビジネス要求に柔軟に対応するサイクルのことです。

おわりに

「どのくらいの精度があればよいのか」、「どのくらいの効率化されて」、「どのくらいの費用対効果につながるのか」を現状の業務やサービスに照らし合わせて見極め、人工知能を構築することが目的やゴールにならないようにすることが大事です。

それは、人工知能で「業務とのマッチングポイントを見いだせない」、「PoCで性能を発揮できない」という理由から検討途中で頓挫するケースが少なくないからです。

人工知能は業務の効率化やサービスの高度化をもたらす技術ではありますが、過剰な期待から幻滅に陥りやすいので、そうならないために人工知能を構築するための重要なポイントは5W1Hを考えることをお届けします。

参考になれば幸いです。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。